彦根城遠望 [イラスト]
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彦根城遠望
地域労働者の共闘を呼びかけて東奔西走し、近江八幡から湖岸を愛知川河口付近まで来ると陽は西に傾き比良の山脈が黒い影となっていた。湖上遙かに伊吹山がたおやかな山容を見せ、賤ヶ岳から少し距離を置いて彦根市街が望めた。よく目をこらすと小高い丘の上に彦根城が白い点となって輝いている。道三が往き、光秀が通い、信長が覇を唱えた道を自転車を押して行くと湖面は夕陽に黄金色に輝き、あたかも希望の道を歩むかのように元気が出た。
団体交渉で会社が賃上げ額を百円、二百円と小出しにする中で妥協しようという者が増えはじめ、結束が崩れて失意のうちに彦根を去るのは翌年の春である。