京都 宮川町 [京都]
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京都宮川町
「メンバーが足らんのんや、すぐ来てくれへんか」と先輩の電話。場所は宮川町、お茶屋の二階だという。それがこの町との出会いであった。春のおどり、祇園祭、五山の送り火など四季折々の行事に合わせて様々に変化する町は歴史と伝統に裏打ちされた文化の現れであり、夕暮れになると簾をかけた茶屋が建ち並ぶ狭い石畳の路を舞子や芸妓が行き交い町が生き生きと鼓動を始める。芸子や舞妓の技芸や所作は厳しい修練の賜で、近頃清水辺りに出没する格好だけの舞妓とはまったく次元が異なるもの。心や中身がない格好だけというのはこの偽舞妓に限らず世の中に余りに多く、今は真偽を見極めるそれなりの力が要求される難しい時代なのかもしれない。
石畳に朴歯の音を響かせて幾たびか通い、時には素寒貧に巻き上げられ同情した姐さんが渡してくれたタクシー代を握りしめてその日の麻雀に勝ったような気分で帰った道である。
琴の音の簾にかよふ夕月夜こころをやりてひとりかへりき