三条大橋と京阪三条駅 [京都]
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三条大橋と京阪三条駅
三条大橋は多くの物語に登場したり絵に描かれた、日本橋と並んで有名な橋だ。
日本橋が高度経済成長期に見るも無惨な姿になったのに対して、三条大橋は比叡を望み鴨川の流れの上にいまなお健在である。橋のたもとには大阪や宇治、奈良への起点となる京阪三条駅があった。「・・・枕の下を水の流るる」ではないがホームの下を疏水が流れ、電車の発着の合間に耳を澄ませば水音が聞こえていた。電車は鴨川に沿って走り、天満橋や北浜に行く車窓からは青空を映す川の流れと爛漫の桜が眺められた。
こうして三条大橋のたもとにたたずむとき、青空と比叡を区切る山の稜線は花と雲との中に渾然としてもうなにも見せてはくれない。 かつて自分は詩人で眼前の自然をうたいあげることができると思っていたが、今はそうでないことを知っている。移り変わる古都の景色の中で自分が歌いえたかもしれない失われた年月はもう還りはしない。