鞍馬街道 [京都]
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(鞍馬1964年)
京都 鞍馬街道
「杉作、日本の夜明けは近いぞ」
鞍馬と言えば思いだすのが鞍馬天狗。
敗戦で荒廃した全国各地の映画館で少年たちが憧れ、胸躍らせたスーパーヒーロー。
だが日本の夜明けは天狗が思い描いたものとは随分違ったものだった。徳川家にとって代わった天皇家や大名など武士階級が保持し続ける封建社会のなかに、杉作をはじめ多くの庶民が兵力として、労働力として将棋の駒のように組み込まれたのだ。「天は人の上に人を作らず人の下に人を作らず」と福沢は言ったが、そんな世の中はどこにもありゃしない。元号が明治と変わっても皇族、貴族、大名や薩長などの藩閥出身者は華族と称して権力を恣にし、欧米列強に対抗して富国強兵、殖産興業の掛け声の下に杉作たち民衆を動員して経済や兵制の近代化を推進した。それは1938年の近衛内閣による国家総動員体制でピークに達し、人が自由な個人として存在することが許されない社会は1945年の敗戦まで続く。その時天狗すでに亡く、杉作少年も90歳は超えていただろう。だから誰も明治維新を革命とは言わない。