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京福岩倉駅 [京都]

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福岩倉駅

 出町柳から鞍馬行きの電車に乗り、岩倉のホームに降り立つと水田を渡る風が気持ちよく、五月闇に無数の蛍が飛び交っていた。「岩倉に住む」と言えば、友人は「狐や狸と暮らすのか」と笑い、年配者からは「なんであんな病院のあるところに」と訝しがられた。

この地は岩倉具視が幽棲していた所で、権謀に長けた彼は薩長を操り徳川幕府打倒に成功、明治維新を巧みに泳いだ。下級貴族出の彼にもとより革命の意識などなく当初は憲法制定にも反対、ひたすら天皇家による中央集権国家を目指した。かくして明治政府は庶民に選挙権を与えることもなく公家や武家の家族制度や忠・孝を中心とする封建的な習慣を強要し、それらの打破には1945年の敗戦を俟たなければならなかった。

駅前の満開の桜が散り、道に散り敷く花を踏んで母と子が通っていった。「踏めば惜し踏まではゆかむ方もなし心づくしの山桜かな」と詠んだ赤染衛門の歌が思い出される春の午後であった。



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