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椰子の実、伊良湖岬 [イラスト]

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椰子の実、伊良湖岬


 島崎藤村が親友柳田国男に聞いた話をもとに詩を書いた「椰子の実」。大中寅二が曲をつけラジオ放送された昭和11年(1936年)は、日本では二・二六事件の後軍備拡張と大陸の権益確保のみならず南方進出の方針が決定され年末には日独防共協定締結、欧州ではヴェルサイユ条約を破棄し再軍備したナチス・ドイツがラインラントに進駐、スペインではフランコ将軍の反乱による内戦が勃発、中国では張学良が蒋介石を拘束する西安事件が起き国共合作への道が開かれるという情勢で、世の中は戦争へと急速に傾斜し破滅への道を突き進んでいた。

 大学のため故郷を離れ、一人旅に出たのははるか昔。「・・・いずれの日にか国に帰らん」の言葉が刻まれたこの碑に思わず瞳が潤んだ伊良湖岬は、打ち寄せる黒潮と白砂の浜辺が今も私を魅了してやまない。

 



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上賀茂、雨上がり [京都]

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上賀茂、雨上がり

 

 資料館で読書をした後通りの向かいの喫茶店へ立ち寄り、ジュンサイ採りをやっているといえば深泥池(みぞろがいけ)へ、杜若が咲いたといえば太田神社へ、桜が見頃だと言えば上賀茂神社まで足を伸ばすことがよくあった。深泥池から上賀茂神社までは両側にすぐき畑の広がるのどかな田園で、初夏の夜にはよく蛍を見かけた。神社付近は社家町といって神社にゆかりの人々が古くから住まいしており、立派な家々が軒を連ね清流には各戸ごとに石橋が架かっている。

 太田神社の杜若が盛りを過ぎ、朝からの雨も昼にはあがって初夏の日差しが眩しいある日、振り返ると比叡山が京の町を見下ろすように聳え空の青さが目にしみた。米国のベトナムでの北爆停止も束の間、キング牧師暗殺、ロバート・ケネディ暗殺のニュースが続くこの空の下の悲劇が嘘のように思われる日だった。



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