京都 八阪神社 をけら詣り [京都]
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京都 八阪神社 をけら詣り
大晦日神社境内に夜の帳が降りる頃神官が灯籠に火をともすのは何年も変わらない。変わったのは東大路通や四条通を走っていた市電が無くなって、灯籠から火縄にもらった白朮火(をけらび)を家まで持ち帰るのが難しくなったこと。市電に運転手と車掌が乗っていた頃は、火のついた火縄を持っていてもせいぜい「気いつけておくれやす」と言われるくらいで乗せてくれた。いまはもう初詣の余興のようなもので、それでおくどさんに火をつけることもないだろう。おくどさん自体が珍しい時代となってしまった。
夜が更けて除夜の鐘が鳴り始める頃になると初詣に参拝する人がみるみる内に増えて身動きができないほどになる。火が消えないように火縄をくるくる回しながら歩くなんてできやしない。地域の伝統的な催事がどれもこれも急激に商業化してゆく中で、本殿に向かって祈る無病息災や家内安全はいつの世も変わらない庶民のささやかな願いだ。たとえ一方通行規制された境内をところ天のように押されてゆくにしても。