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高宮の時雨 [イラスト]

高宮時雨.jpg

高宮の時雨

 京都を発ち草津で東海道と別れて北上すると、琵琶湖へ注ぐいくつかの川を越え犬上川の橋を渡って中仙道高宮の宿に至る。高宮に移り住んだ頃、既にゲバラはボリビア山中で消息を絶ち、アメリカの若者はベトナムの泥沼に足を取られ、パリのカルチェラタンは学生に占拠されていた。高宮はそんな世界情勢と関係なく、多分百年前からそうであっただろう紅殻格子の家が街道に沿う宿場町の雰囲気を残す静かな町で、晩秋から冬にかけては雨や小雪の舞う日が続いた。時雨が残った最後の紅葉を散らして過ぎていったある日、蛇の目傘をたたむ妙齢の女性の姿に思わず息をのんだ20代だった。

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